カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

真意を得た夕霧は
源氏を問い質すものの…

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横笛

  •  よこぶえ
  •  源氏:49歳、紫の上:41歳、
    女三宮:23歳、夕霧:28歳、
    薫:1歳、匂宮:2歳、明石女御:21歳

 薫の成長

  柏木の死から1年が経った。行く末頼もしき若者だと殊更目を掛けていたゆえに、あの許せない過ちがあったにせよ未だに柏木を思い出しては懐かしむ源氏。薫の将来のこともあるので、柏木の供養のために黄金を寄進した。事情を知らない前の太政大臣はただただ恐縮に感じ入るのみであった。

  朱雀院は娘たちに相次ぐ不幸せに心痛めながらも、女三宮が同じ念仏を唱えていることを慰めにしながら勤行に励む。それでも始終手紙だけはやり取りしていた。
  朱雀院が籠る山で採れた筍が女三宮のもとに届けられた日のこと。薫がよちよち這って来て、筍をかじって遊んでいる。源氏は薫の類い稀な可愛らしさに目を細めて微笑む。父にも母にも特に似ている顔つきではなく、高貴で美麗ゆえに、この先困ったことでも起きねばいいがと要らぬ心配をするのであった。

タケノコ

 想夫恋と柏木の横笛

  秋。夕霧は変わらず女二宮のもとを訪ねていた。一条御息所と対面し、亡き柏木の思い出を語る。柏木は和琴の名手だったので、その腕前は妻だった女二宮にも伝わっているだろうと夕霧は言い、女二宮に和琴を爪弾くよう促す。
  隈なき月に雁の鳴く声。あわれな風情に惹かれて夕霧は琵琶を構え、想夫恋(そうふれん・古代中国の晋の大臣が池に蓮を植えて愛した歌。日本では男を恋する女心の曲とされた)の出だしを弾いた。夫を亡くした身に想夫恋とは、心を見透かされたかのような気になった女二宮は、ますます弾きづらいと感じるものの、それでも曲の終わりのほうを奏でた。
  あまり長居すると亡き人が嫉妬するであろうと夕霧は後ろ髪引かれる思いで退出するが、その折に柏木の遺品である横笛を一条御息所から受け取る。

  自邸に戻ってみれば、格子(こうし・戸や窓)は閉め切られており、子たちは既に寝ていた。
「夜更けまで遊び歩く夕霧はどうかしてる」膨れっ面の雲居の雁も狸寝入りを決め込む。こんな月夜にもったいないと格子を開けさせ、月を眺めては物思いに耽る夕霧だが…

  うたた寝をしてしまった夕霧の夢枕に、柏木の姿があった。
「その笛は子孫に伝えたい…」
子孫って誰だ?と聞く間もなく、夕霧は目が覚めてしまった。

月夜

  翌日、夕霧が六条院に向かうと、明石女御が里下がりをしていた。明石女御の三男である匂宮(におうのみや)は、紫の上が養育している。匂宮は夕霧にまとわりつき、夕霧は2歳の匂宮を抱きかかえて明石女御の寝殿のほうへ行く。
  ちょうど源氏と薫もそこにいたので、夕霧は薫の顔を初めて間近で見ることができた。笑顔が柏木に似ている…源氏はこれを知っているのだろうか? 最愛の息子の死に落胆している前の太政大臣が孫の存在を知ったらどれだけ喜ぶであろう。知らせてやりたいが、そんなことできやしない。何せ証拠がないのである。

  夕霧は源氏に昨夜の想夫恋のことを話した。未亡人相手に早まったことをしてはならぬと、ひとかどの正論を説く源氏。人にはそう言うものの、自分自身はどうなんだと夕霧は感じ、今しかないとばかりに横笛の夢の話を繰り出してみる。
  この笛は薫に託すべきものであり、夕霧は何かに感づいていると源氏は察知した。しかし「その笛は亡き桃園式部卿宮の笛で、宮が柏木に下賜したものゆえに、縁続きの我が家が預かっておこう」とごまかす源氏。
  夕霧はさらに、源氏に謝罪したいとの柏木の遺言があったことまで明かして追い討ちをかけたが、源氏は「人に恨まれるような素振りを見せた記憶はないのだが…」とはぐらかしてしまった。

系図
憂き節も忘れずながら呉竹の こは捨てがたきものにぞありける
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