カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

母・玉蔓の奮闘
その結果はいかに?

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竹河

  •  たけかわ  匂宮三帖
  •  薫:14~23歳、匂宮:15~24歳、
    夕霧:40~49歳、玉蔓:47~56歳、
    冷泉院:43~52歳、今上帝:35~44歳

 玉蔓の悩み

  髭黒は太政大臣まで昇りつめたものの早くに亡くなってしまい、残された妻の玉蔓は男三人、女二人の子を抱え、育児に追われる。財産はあるので生活に困りはしないが、主のいない家に出入りする客は少ない。親族との付き合いも疎遠で、源氏の遺志を生真面目に実行する夕霧が却ってしばしば訪れているありさまだった。

  玉蔓の目下の悩みは娘たちの将来。息子たちは元服したし、自ら立身出世していくであろうが、娘たちをどう縁組すればいいものか思案していた。宮仕えさせたいという髭黒の遺志があり、今上帝も大君(おおいぎみ・紅梅の帖で登場した紅梅の長女とは別人)の入内を強く望んでいる。とはいえ、明石中宮の威光に気圧されるのは目に見えていたため、玉蔓は二の足を踏んでいた。
  同時に冷泉院も大君を希望していて、かつて冷泉院の意志に背いて黒髭に嫁いだ過去を考えると、やはり躊躇してしまう。

  さらに夕霧の息子・蔵人少将(くろうどのしょうしょう・夕顔の帖に登場した軒端荻の夫とはもちろん別人)もまた熱心に結婚を申し込んできていた。とはいえまだ身分が軽く、大君の結婚相手には相応しくない。いずれ出世すれば中の君(なかのきみ・紅梅の帖で登場した紅梅の次女とは別人)を彼に嫁がせてもいいかもしれない、と玉蔓は考えていた。
  そして、薫についても、いずれは当家の婿に迎えたいものだと算段をしていたのである。

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  その薫はカタブツ呼ばわりされるほどの生真面目人間。しかしただそう呼ばれるのも癪だと感じ、風流人ぶった振舞いでもしてみようと、梅の花の咲くころに玉蔓の屋敷へ向かう。
  門を入ったところで蔵人少将に出食わした。屋敷内から演奏の音がするので、もしや大君が弾いているのではと気もそぞろに立ち聞きしていたらしい。親が許さぬ恋とは辛いものだと薫は思いつつ、彼に案内を頼む。歌を吟じながら中へ進めば、見事、演奏が薫の歌にぴったり合わせてくるではないか。

  そして玉蔓は、薫に和琴を奏でるよう勧める。薫の琴は亡き実父の太政大臣(頭の中将)が奏でる音色に似ていた。むしろ柏木の音色そのままに思え、玉蔓は思わず涙を落とした。
  何をするにも薫が注目を浴びてしまうので、蔵人少将は自分が不甲斐なく感じ、落ち込んでしまう。
  翌朝、薫は宴の返礼に和歌を寄こした。姫君への思いを仄めかす内容であった。

 蔵人少将の苦しみ

  3月。桜の木のそばで、大君と中の君は碁を楽しんでいた。その姿を蔵人少将が垣間見て、叶わぬ恋に煩悶する。
  姫君たちの兄弟は、美しい大君を冷泉院に嫁がせることに反対の立場だった。既に退位して盛りが過ぎた院よりも春宮に入内させてはどうかと、玉蔓に進言する。

  日は流れるも、冷泉院からは毎日のように大君の催促が来ていた。冷泉院妃で腹違いの妹にあたる弘徽殿女御からも、気兼ねせず早く決めてほしいとの便りが届く始末。ならば仕方ないと大君の婚礼の準備に取り掛かるも、そこへ蔵人少将に泣きつかれた雲居の雁からも息子と結婚させてやってくれないかとの手紙が届いて、玉蔓はすっかり参ってしまう。

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  雲居の雁は「将来、蔵人少将には中の君を…」と仄めかす返事を受け取るも、大君ひとすじの蔵人少将は到底受け入れられない。ただただ苦しいだけの時間が過ぎ、その間にも冷泉院への輿入れの準備は着々と進むのだ。落ち込む蔵人少将を前にして、雲居の雁も夕霧も、もはや為す術がないのであった。

 結局尽きない悩み

  4月。大君が冷泉院に嫁いだ。蔵人少将は茫然自失で、薫もまた残念がっていた。今上帝も不満を玉蔓の息子にぶつけ、息子は玉蔓にその旨を愚痴るが今更どうにもならない。
  ひきかえ、冷泉院の寵愛ぶりはこれ以上ないほどのもので、7月には懐妊、翌年に女児を産んだ。産後も院の寵愛は変わらぬままゆえに、弘徽殿女御付きの女房たちは面白くなく、女房間のいさかいも発生した。挙句に今上帝が未だに大君が入内しなかったことに不平を漏らしており、責められるばかりの玉蔓は困窮して、中の君を入内させることに決めてしまった。

  中の君が入内して片付いたので、玉蔓は出家を思い立った。しかし息子たちが反対したため出家は思いとどまる。
  大君は男児を出産。冷泉院の愛情を独占することになり、女房間だけでなく大君と弘徽殿女御の関係もぎくしゃくして行った。その話を聞くにつれ、玉蔓は宮仕えなどさせねば良かったと後悔し始める。

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  月日は流れた。夕霧は右大臣から左大臣に、紅梅大納言が右大臣に、薫は中納言に、蔵人少将は宰相に昇進した。宰相は他の女性と結婚したが、未だに大君のことを忘れられないままである。その大君は心労が多く、実家へ里下がりしがちになっていた。却って中の君のほうが溌剌と暮らしている。
  昇進の挨拶に来た薫の振舞いを見て、玉蔓は最初から彼を娘の婿にしておけばとまたも後悔した。息子たちの出世が遅いことも、同じように彼女の悩みの種であり、玉蔓の悩める日は早々には終わりそうもない。

系図
人はみな花に心を移すらむ ひとりぞまどふ春の夜の闇
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