六条御息所との別れと桐壷院の死
正妻の葵の上が亡くなり、これで六条御息所も晴れて源氏の正妻に迎えられるだろうと世間が噂するのとは逆に、源氏との縁が程遠くなった御息所。悩める彼女は斎宮とともに伊勢に下る準備をし、いよいよ出発間近となった。
このまま別れるのはあまりにも忍びないと、源氏も御息所のもとを訪ねる。顔を合わせてしまうとやはり再び思いが乱れる御息所だったが、予定を変えることなく伊勢へと下って行った。
桐壷院の病が篤くなり、死期を悟った院は朱雀帝に春宮と源氏のことを遺言で託し、ほどなく崩御してしまう。
時勢は桐壷院の外戚であった左大臣側から朱雀帝の外戚である右大臣側に移って行った。朱雀帝の強く言いだせない優しい性格もあって、政治は右大臣の思うがままになっていく。
朧月夜が入内して尚侍(ないしのかみ・女御、更衣に次ぐ後宮)となった。朱雀帝の寵愛は深いが、源氏との恋はまだ密かに続いていた。朱雀帝もそれを知らないではいなかったが、昔から続いていたのなら仕方がないと納得する。
藤壷中宮の出家
桐壷院の死で後ろ盾を失った藤壷中宮が実家へ戻った。未だ藤壷への思いを断ち切れない源氏は、そっと忍びこんで藤壷を必死にかき口説くが、藤壷は受け入れない。
源氏との過去や春宮の出生の秘密が世間に漏れでもしたらと思うと心が張り裂けんばかりの藤壷は、後ろ盾の危うい春宮を守るためにも出家を決心する。
藤壷に完全に拒絶された源氏は傷心し、春宮のもとにも二条院にも戻らず紫野(むらさきの・京都市北区)の寺院に籠って勤行に励んだ。それでも紫の上や朝顔には手紙を送っていた。
桐壷院の一周忌のあと藤壷中宮は法要を催し、その場で出家を願い出た。突然のことに周囲は動転するが本人の決意は固く、髪を下ろしてしまう。
源氏は放心し、現世と決別した藤壷の行為を嘆いた。
朧月夜との関係の露呈
桐壷院側に対する圧迫がいよいよ増す。藤壷の封禄は滞り、藤壷に仕える者の昇進はなくなる。左大臣も右大臣の権勢を面白くなく感じて辞職する。頭の中将も右大臣の娘婿であるにも関わらず冷遇されていた。
そんな状況で源氏と朧月夜の密会が右大臣にバレてしまう。右大臣から状況を聞いた弘徽殿大后は怒り心頭で、後宮に手を出すとは帝への謀反であると言い始める始末であった。