奇妙な関係
内大臣が引き取った近江の君の噂が甚だよろしくない。実の子だと判った途端に深く考えずに招き寄せたにもかかわらず、意に染まぬとなればいい加減な扱いをする内大臣の白黒はっきりした性格も良し悪しだと源氏は考える。
噂は玉鬘の耳にも届いていて、自分も同じような目に遭っていたかもしれないと思いあたり、源氏に引き取られたのは幸運だったのだと感じるようになっていった。源氏の奇妙な恋心は困りものだが、しかし無体な振る舞いに出るわけではないので、玉鬘も近頃は安心している。
初秋になっても源氏は変わらず玉鬘のもとを訪ねては、恋人のような親子のような不思議で中途半端な関係を続けていた。琴を枕にして玉鬘に寄り添っていた源氏は、夜が更けてきたので帰ろうとした際、庭の消えかかった篝火を焚きつかせ、今の気持ちを和歌にして玉鬘に伝える。
ストレートな恋心の和歌に戸惑いながらも、玉鬘は返歌できれいにかわした。
東の棟からなにやら合奏の音がする。夕霧が柏木たちと演奏しているのだと察した源氏は、そちらへ顔を出した。
源氏も琴を掻き鳴らし、夕霧が笛を吹く。すぐそばに思いを寄せている玉鬘がいるのだと思うと、柏木は歌うのも躊躇してしまう。源氏は琴を柏木に託した。琴の名手である内大臣に負けずとも劣らぬ腕前ではあるが、やはり玉鬘のせいか緊張していて控えめにつまびくだけだった。