カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

宮仕えが決定した玉鬘
男たちの落胆は計りしれず

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藤袴

  •  ふじばかま  玉鬘十帖
  •  源氏:37歳、紫の上:29歳、
    玉鬘:23歳、夕霧:16歳、
    冷泉帝:19歳、髭黒:32歳、
    柏木:21歳

 迫る夕霧

  冷泉帝への宮仕えをするべきかどうか迷う玉鬘。女人たちが華を競う場に今更立ち入ってやっていけるだろうか、秋好中宮や弘徽殿女御の恨みを買いやしないか、かといってこのまま源氏の庇護のもとで暮らすのも悩ましい。内大臣は源氏に気遣って引き取ろうともしない。玉鬘の嘆息ばかりが漏れる日が続いた。

  大宮が亡くなったため、喪中の装いで夕霧が玉鬘のもとを訪ねてきた。これまで姉弟として接していたので、急に態度を変えるのもおかしかろうと、これまでどおり几帳(きちょう・間仕切りのカーテン)だけ隔てて会話をしている。
  夕霧は冷泉帝からの宮仕えに関する伝言を述べ終わると、フジバカマの花をそっと差し入れ、花を手に取ろうとした玉鬘の袖をぎゅっと掴んだ。和歌を詠んでかき口説く夕霧だったが、そんな不埒な真似を煩わしく感じた玉鬘は「気分が悪くなったので」と奥に引き籠ってしまう。
  こんな態度を取られるならば、なまじ気持ちを打ち明けない方が良かったと夕霧は後悔した。

フジバカマ

  源氏のもとに戻った夕霧は、玉鬘の身の処し方について源氏に問い質す。源氏は玉鬘にふさわしい相手となると、蛍兵部卿宮に嫁ぐか、もしくはやはり宮仕えであろうと答えるが、夕霧は納得しない。

  ならば「源氏の手元には多くの女人がいるので、玉鬘をその数に加えるわけにもいかず、やむをえず実父の内大臣に譲るという名目を作りながら宮仕えに出しつつも、手放さずに置いておこうと思っているのではないのか」と内大臣も噂していたとまで夕霧は踏み込んで話す。詮索好きな内大臣らしい浅知恵だと源氏は朗らかに笑うも、やはり見抜かれてしまったかと内心動揺するのであった。

 男たちの落胆

  大宮の喪が明けたが、9月は忌月なので10月には宮仕えに出仕するとの旨を冷泉帝に奏上する。玉鬘に思いを寄せていた者たちは、その報を聞いて皆落胆した。夕霧もまた告白のあと玉鬘がどんな気持ちでいるのか気にもなるので、なにかと用事を作ってはせっせと玉鬘の世話を焼いていた。

  玉鬘の実の姉弟にあたる柏木は、あれほど熱心に言い寄っていたのにふっつりと音信もなくなっていたが、ある日、内大臣の遣いとして玉鬘のもとへやって来た。直接話をするのではなく、取り継ぎの女房を介しての会話だったため柏木は、あまりによそよそしいと不満を口にする。恋文を送っていた相手が姉だったと判った上でも、すぐには気持ちの整理がつかぬ様子。

フジバカマ

  かたや髭黒も熱心に玉鬘に言い寄っていて、内大臣にも取り入るほどだったが、内大臣としては彼の身分や役職としては婿に充分だと思いつつも、源氏の意向もあろうからと、源氏任せにしていた。ところが、髭黒の妻が問題だった。髭黒の妻が紫の上の姉にあたるうえに、髭黒がどうにかして妻と離縁したいと画策していると伝え聞いていた源氏は、彼を玉鬘の後妻に据えるのには気が進まない。

  9月。玉鬘の出仕の日が近付く。数々の男性から出仕の別れを残念がる手紙が届いた。とりわけ蛍兵部卿宮から届いた手紙にだけは、玉鬘も返事をしたためる。返事を受け取った蛍兵部卿宮は、玉鬘が自分の気持ちを知らなかったわけではなかったのだと、寂しい中にかすかに嬉しさを感じた。

系図
同じ野の露にやつるる藤袴 あはれはかけよかごとばかりも
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