カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

政敵の娘と懇意になる源氏
次なる禁断の愛に踏み込む…

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花宴

  •  はなのえん  
  •  源氏:20歳、紫の上:12歳
    藤壷中宮:25歳、葵の上:24歳

 源氏、春の宴で朧月夜に会う

  桐壷帝が花見の宴を開いた。藤壷中宮、弘徽殿女御、春宮をはじめ大勢が揃う中、源氏は「春」という題目で漢詩を詠む。吟ずる声も詩も素晴らしい。頭の中将もそれに続いた。ともに美しい舞も披露し宴はさながら二人の独壇場である。

  宴が終わり、皆散り散りに帰って行く。ほろ酔いで気分の良い源氏はどうもその場を去りがたい気持ちだった。ひとり余韻にひたりつつ、藤壷の局(つぼね・部屋)あたりを彷徨うものの扉には用心深く鍵がかかっている。
  踵を返して弘徽殿の局へ行ってみれば、あろうことか不用心にも施錠されていない。そこへ女性が「朧月夜に似るものぞなき(照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜に似るものぞなき・新古今集、作:大江千里・照り輝くのでもなく曇り空で見えなくなるのでもない、春の夜の朧月夜は最上の月夜だ)」と口ずさみながらやって来た。

朧月夜

  源氏は女の腕を掴んで招き寄せ、和歌で口説きはじめた。女も最初こそ怯えていたが、すぐに相手が源氏だと察知。頑なな女だと思われたくないこともあって、素直に源氏を受け入れるが名乗ろうともしない。
  名前が判らなければ手紙も送られないし、次回逢う手立てもない。そうこうするうちに朝になったので、やむをえず持っていたお互いの扇を交換して、ふたりは別れた。

 女の正体は?

  あの女性は誰だったのだろう。
  弘徽殿女御の妹なのだろうが、数人いるので誰なのか断定できない。もしや春宮に嫁ぐ予定の女人だとすると厄介だ。ただでさえ右大臣側には快く思われていない身である。春宮妃になろうかという女性に手をつけたとあっては騒ぎにもなろう、と源氏は纏まらぬ考えに浸っていた。

  源氏は久しぶりに二条院の紫の上のもとに戻り、聡明に愛らしく育って行く紫の上の姿に格別な思いを抱く。最近では源氏の後を追いすがって泣くようなこともなくなり、一歩ずつ大人になっているようだ。

 朧月夜との再会

  春の宴で源氏と逢った女性、朧月夜(おぼろづきよ)は物思いに沈む日が続く。春宮へ入内することが内定した身でありながら、源氏との一夜の逢瀬が忘れられないのだ。

  3月20日を過ぎたころ、右大臣が藤の花の宴を開き、源氏も招待される。右大臣からすれば源氏は政敵とはいえ、おろそかにできはしないし、来賓としては一級で宴の価値も上がるのである。

白藤

  宴は盛り上がった。源氏はひどく酔ったふりをして中座し、屋敷の戸口に寄り掛かっては、この中に朧月夜がいるかもしれないと考え、「扇を盗られて辛い目にあった」と冗談ぽく口ずさんでみる。
  女房は「おかしな人ですこと」とそやすが、ひとり何も答えず溜息をついていた女性がいた。もしやと思って几帳(きちょう・間仕切りのカーテン)越しに手を握ると、やはりあの朧月夜だったのである。

系図
深き夜のあはれを知るも入る月の おぼろけならぬ契りとぞ思ふ

 10秒でわかる花宴の人間模様

光源氏←政敵→右大臣。光源氏→アタック→朧月夜(ついつい火遊び)。朧月夜→愛情→光源氏(一夜の逢瀬以来、源氏が気になる)。朧月夜←親子→右大臣。朧月夜→春宮(嫁ぐ予定)
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