カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

主人公・光源氏の誕生
母を亡くした子は…

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桐壷

  •  きりつぼ
  •  源氏:誕生~12歳

 桐壷更衣の死

  いつのことだったか、宮中で帝の愛情を一身に受ける女性がいた。彼女の名は桐壷更衣(きりつぼのこうい)。さほど身分が高いというわけでもなく、援助してくれるはずの父も早くに死別していたので、帝の愛情だけが頼りだった。しかし、むしろ桐壷帝(きりつぼてい)は寝ても覚めても彼女にべったりだったために、桐壷帝の愛情を受けられない周囲の女人から桐壷更衣はひどく妬まれてしまう。

  そんな状況で男子が生まれた。子を産んでからはますます謗りがひどくなる。とりわけ帝の長男の母であり、権勢をふるう右大臣の娘でもある弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の嫉妬は激しいものであった。帝の愛情が我が子ではなく桐壷更衣の子に移り、ひいては春宮(とうぐう・皇太子)の座を盗られるのではないかと危ぶんだためだ。

紅葉

  このような不穏な状況に耐えきれなかったのであろう、桐壷更衣は心労から病に倒れ、ほどなくして亡くなってしまう。残された若君はまだ3歳であった。これがのちの光源氏(ひかるげんじ)である。

 源氏姓を賜る

  翌年、弘徽殿女御の子が立太子して春宮となった。桐壷帝は若君の将来を案じ、高句麗から来ていた人相を見る男に引き合わせる。すると男は酷く驚き「この若君は天上の位に昇る顔相だが、そうなると国が乱れてしまう。国家の柱石となり、国政を補佐する役目の顔相だ」と述べたのである。

  他の観相者からも似たようなことを言われたこともあり、後ろ盾のない皇族のままで皇嗣争いに巻き込まれて苦労するより良いと考えた桐壷帝は、若君に源の姓を与えて皇族から臣籍に下すことにした。

 母に生き写しの藤壷の宮

  いまだ亡き桐壷更衣を忘れられない桐壷帝。先帝の四女が桐壷更衣によく似ているとの話を聞き、後宮に迎え入れる。藤壷の宮(ふじつぼのみや)という。桐壷更衣に似ているだけに周囲の女人はいい気はしないが、桐壷更衣とは異なり藤壷の宮の身分が高いため、おろそかな扱いなどできやしないのだった。

  桐壷帝は源氏の若君を手元から離さなかったため、若君は藤壷の宮とも自然と近しくなる。亡き母のゆかりの人だと聞いたせいもあってか、より睦まじくなっていった。

梅

  源氏の若君はたいへんな美貌だったため「光る君(ひかるきみ)」、藤壷の宮もまた「輝く日の宮」と呼ばれていた。

 源氏の元服

  源氏の若君は12歳になった。
  元服し、妻に左大臣の娘、葵の上(あおいのうえ)を迎えた。だが葵の上のほうが四つ年上ということもあってか、彼女の取り澄ました性格にどうも馴染めない。

  元服したからには大人であり、藤壷の宮も以前のように気軽に御簾(みす・スダレ)の中に入れてくれなくなる。顔すら見られなくなるわけだが、声だけでも聞きたいとばかりに源氏は嫁が待つ左大臣家よりも、ついつい藤壷の宮のいる宮中で過ごしがちになってしまうのだった。

  亡き母、桐壷更衣の実家は祖母が亡くなったため荒れ果てていた。源氏はそこを改修し、立派に修繕させて「二条院」として住むようになった。

系図

 10秒でわかる桐壷の人間模様

桐壷帝→溺愛→桐壷更衣(更衣、源氏を出産)。弘徽殿女御→嫉妬→桐壷更衣(更衣の死)。桐壷帝→寵愛→藤壷の宮(更衣亡きあと後宮へ)。光源氏→思慕→藤壷の宮(亡き母に思いを重ねる)。光源氏←冷淡→葵の上(ぎくしゃくした新婚生活)
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