カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

親心から二条院に避難させたが…
それが浮舟の悲恋の始まりになる

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東屋

  •  あずまや  宇治十帖
  •  薫:26歳、匂宮:27歳、
    中の君:26歳、浮舟:21歳、
    夕霧:52歳

 浮舟の破談

  薫は浮舟を引き取りたく考えたが、世間体もあるので、弁の君を通じてそれとなく気持ちを伝える程度のアプローチしかしなかった。浮舟の母・中将の君も薫の申し出を本気にしなかった。

  一方、中将の君には、現在の夫・常陸の守(ひたちのかみ)との間にも子があった。常陸の守は我が子ばかりを可愛がり、継子の浮舟のことは二の次。それだけに自分が守らねばと、中将の君は浮舟のために心を砕いていた。
  常陸の守は田舎臭く、風流ごとに疎い割には派手好み。それでも世渡りは上手く、財力もあった。それゆえに娘と結婚を望む者もいたわけで、中でも左近の少将(さこんのしょうしょう)という若者が熱心に言い寄ってきていた。

  立派な婿をと考える中将の君だったが、地方官僚風情の娘が望める相手としてはこの辺りが精一杯だろうと踏んで、彼の求婚を許諾する。
  日取りも8月と決まった。しかしながら浮舟が常陸の守の継子だと知った左近の少将は、態度を豹変させる。財力が目当てゆえに常陸の守の他の娘と結婚させてくれと言い出したのだ。

水引

  それを聞いた常陸の守は有頂天になった。継子ではなく実子を嫁にと所望してきたのは、自分の価値が宮家である八の宮に勝ると感じたせいだろうか。対して中将の君は沈痛の色を浮かべた。これでも妥協した縁組だったのに、まさかこんな形で裏切られ覆されるとは―――

  浮舟の乳母も怒り心頭。こうなったら便りを寄せてくれていた薫に嫁がせてはと進言するも、中将の君の気はやはり進まない。あまりに格差がありすぎるからだ。

  結婚の日が近づくと、準備で屋敷中がごった返しだす。少将が住まう部屋も空けねばならず、自然と浮舟たちの居場所がなくなってしまった。これではいけないと中将の君は二条院の中の君に手紙を書いて、居候を申し込む。
  同情した中の君は独断で許諾の返事を出した。

 浮舟、匂宮に見初められる

  浮舟と中将の君が二条院に移って幾日か過ぎた。匂宮の姿を物陰から覗き見た中将の君は、その貴い美貌に驚く。偶然にも自分の継子である式部の丞(しきぶのじょう)も匂宮のお供に控えていたが、匂宮に近付くことすらできない。

  体調不良が続く明石中宮の見舞いに行かねばと身支度を始める匂宮に向って、何やら事務報告をする冴えない男がいた。誰かと思えば左近の少将ではないか。娘との結婚を許した時分はそれなりに立派な男だと思っていたが、匂宮と較べると雲泥の差だと実感する。

  中の君と対面した中将の君は、匂宮を褒めそやす。そこへ薫がやって来たと聞き、またも物陰に隠れて覗き見る中将の君。艶やかさでは匂宮に劣るものの、気高く清楚な風貌に中将の君はまたも仰天した。この世にこれほどの男子がふたりも居ようとは…
  薫はまたも中の君への思いを吐露しはじめるが、機転を利かせた中の君が浮舟の滞在を明かす。動揺する薫だったが、上手く伝言を頼んで退出していった。

扇子

  長らくの留守に痺れを切らした常陸の守が、迎えを二条院に寄越す。中将の君はやむを得ず浮舟を残したまま自邸に戻った。
  見慣れない牛車を見かけた匂宮は、中の君が浮気でもしているのかと勘繰る。上手く追究をかわした中の君だったが、事件はその夕方に起こった。

  浮舟を偶然見付け、新参の女房と勘違いした匂宮が彼女を手籠にしてしまうところを、浮舟の乳母に見咎められたのである。何も起きずに済んだものの、匂宮は頑として浮舟を放さない。
  そこへ使いが明石中宮の容体悪化を報せに来たので、ようやく観念した匂宮は名も知らぬ浮舟にしばしの別れを告げて御所へ向かった。

 薫の大胆な行動

  かたや何が何やら判らぬ浮舟はただ悲しむだけで、見かねた中の君が姉代わりに彼女を慰める。乳母は一旦家へ戻り、中将の君に一切合切を報告した。驚き慌てた中将の君は物忌(ものいみ・陰陽道の風習で凶日に外出を慎み、家に籠ること)にかこつけて、浮舟を二条院から退出させる。とはいえ家に連れ帰るわけにもいかず、三条あたりの小さな別邸に彼女を留め置くことにした。
  残された浮舟は所在なく寂しく過ごし、中将の君もまた彼女の将来を案じてはどうするべきか悩む日が続く―――

  秋。宇治の御堂が完成したとのことで、薫は早速現地へ向かった。かつての山荘の跡には立派な屋敷が建っている。薫は弁の君を訪ね、浮舟のことを質した。浮舟が二条院を出たと聞いた薫は、弁の君に浮舟の居場所までの案内を乞う。

葉の上の雫

  日を改めて、弁の君は三条の浮舟の仮住まいを訪ねた。八の宮ゆかりの人物の訪問を嬉しく感じる浮舟。薫の要請で来たとの話に、遊びではなくそこまで思ってくれていたとは、と彼女が驚くのも無理はない。
  夜も更けた頃、薫も到着した。どうしていいか判らず動揺する浮舟と乳母であったが、弁の君が気を利かせて対座の場を設ける。

  朝を迎えた。これからどうなるのかと不安になる浮舟や乳母たちをよそに、薫は既に心を決めていた。彼女を宇治の屋敷に匿うことにしたのである。
  さて宇治に到着したは良いが、この先どうしたものか…

系図
形見ぞと見るにつけては朝露の 所せきまでぬるる袖かな
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