カンタンに読める! 3分で読む源氏物語

狙うは玉の輿!近江の君の
ドタバタコメディ

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常夏

  •  とこなつ  玉鬘十帖
  •  源氏:36歳、紫の上:28歳、
    玉鬘:22歳、夕霧:15歳、
    柏木:20歳

 六条院に集う若い男たち

  夏、源氏をはじめ夕霧や親しい公卿たちが六条院に集い、水辺で涼んでいた。内大臣の子弟も現れたので、源氏は近江国(滋賀県)で見つけ出して引き取ったと最近噂の内大臣の姫君のことを興味深く尋ねた。
  柏木の弟である弁少将(べんのしょうしょう)が、春頃に娘だと名乗り出た女性がいたので、柏木に検分させて屋敷に置くようになったとの旨を答える。若い頃に遊び歩いた内大臣らしい顛末だと源氏は笑い、雲居の雁の一件でなかなか前に進めない夕霧に対しても、他の落ち葉を拾ってみればよいものをと冗談めかしてからかうのだった。

夏

  夕暮れになり、皆をそのまま残して源氏は奥へ下がる。玉鬘を呼び寄せ、水辺の若い公卿たちを遠目に見せて、品定めに興じる。夕霧と雲居の雁の件で内大臣がへそ曲がりなのが困るとこぼすと、そのような仲違いをしているようでは実父との対面はいつになることやらと玉鬘は思い乱れた。

  何か用事を見つけては玉鬘のもとを訪ねる源氏だったが、中途半端な恋心を断ち切るには、それ相応の男に縁組させてしまうのが一番だろうと考えるようになる。蛍兵部卿宮か髭黒の右大将あたりの妻に収まるのが妥当なのだろうが…

 近江の君と内大臣

  内大臣のもとに名乗り出た近江の姫君(近江の君(おうみのきみ))の評判が、すこぶるよろしくない。開き直った内大臣は
「ああ、そうだ。見知らぬ田舎娘を引き取ったさ。他人のことをああだこうだ言わない源氏が、我が家のことになると地獄耳で批評までするなんて、人並みに扱われている心地でなんとも光栄なことだ」と皮肉をこぼしている。
  源氏が探し出したという姫君はこれ以上ないとの評判の姫らしいのに、自分が探し出した姫君といったら…。雲居の雁のことも、源氏が真摯に頭を下げて頼んでもくれば夕霧との縁談を許さないわけでもないのに、いや、それでも今の冠位では見劣りする…などと悶々としているようで。

夏

  思い立った内大臣は雲居の雁のもとを訪ねた。ちょうど昼寝をしていたようで、内大臣が扇で煽ぐ音で目を覚まし、きまり悪そうにしている。良い縁組を考えているから下手な行動に出てはいけないなどと軽く説教をするものだから、祖母の大宮から便りがあっても、雲居の雁は内大臣に気後れして訪ねることもできなかった。

  あの近江の君の処遇を考えた内大臣は、田舎に送り返すと問題になるし、かといって屋敷に置いておくのも人の噂になりそうだしと思考を巡らせ、弘徽殿女御のそばに置いて女房たちに再教育させようと決めてしまう。
  女御の了承を取り付けて、その足で近江の君のいる部屋へ向かったところ、五節の君(ごせちのきみ)という若女房と双六遊びにキャッキャ言いながら夢中になっているありさまだ。
  見た目はさほど悪くないどころか内大臣の面影も強くあるのに、やたら落ち着きがなく、早口なのが嘆かわしい。近江の君いわく、お産の時に祈祷した僧侶が良くなかったので早口に生まれついてしまったと、いちいち説明がおかしいせいで、内大臣も苦笑してしまった。

夏

  ちょうど弘徽殿女御が里下がりで戻ってきているので、あちらで立ち振る舞いなどを覚えてきなさいと内大臣が告げると、近江の君は大喜び。水を汲んで頭に載せて運ぶ仕事でも便所掃除でもやりますと意気揚々、さらに早口になる。
  いつ訪ねればと聞けば、内大臣はいつでもどうぞ、なんなら今日にでもと投げやりな返事をする。じらしてしまうと先方の機嫌を損ねてしまうとばかりに、近江の君は早速女御に宛てて和歌(下の和歌を参照)を詠んだ。

  和歌を受け取った女御は、こんな感じの歌を詠まねば相手に失礼になるだろうから、と女房に返歌を書くように申しつけてしまう。代筆めいては礼を失すると女御の筆跡を真似て女房が返歌を書いたものの(下の和歌を参照)、自身が詠んだものだと他人に思われたら困ると女御が率直に文句を言う始末だ。それでも見る人が見れば女御の筆跡かどうかくらい察するものだと、女房はその返歌を近江の君へ届けさせてしまった。
  返歌を受け取った近江の君は「まつ」と書いてるのだから、来訪を喜んで待っているに違いないわと、ルンルン気分で訪ねる準備を始める。

系図
草若み常陸の浦のいかが崎 いかであひ見む田子の浦波
常陸なる駿河の海の須磨の浦に 波立ち出でよ箱崎のまつ
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